育てる植物

藁(わら)
稲・小麦等などのイネ科植物の主に茎を乾燥させた物です。「わらじ」や「蓑(みの)」など日本人の暮らしの必需品をつくる素材として持用いられ、藁を綯ってつくるしめ縄は神が占有する場所を示すものとされました。のちに結界や邪気を払う魔除けのような意味合いも含んでいき、現在も神聖性を示すものとして存在します。

稲穂(いなほ)
私たち日本人は古くからお米を糧として生きてきました。その起源は神話に見ることができます。天孫降臨する瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に天照大御神は稲穂を授けて言います。「私が高天原で育てた稲穂をあなたに与えましょう。国民の糧としなさい。」稲作を軸に日本人の生活や秩序が形づくられ、豊穣を祈り、収穫に感謝することをカタチにしてきたのです。

茅(ちがや)
日本に古くから自生する植物のひとつで大変丈夫な茅は、カゴや茅葺き屋根などに用いられました。
罪や穢れ、疫病などを祓う夏越の祓いで見られる「茅輪」の素材として知られます。草本の総称として「茅(かや)」と呼ばれるように、神話には野の神としてカヤノヒメがお生まれになります。

笹(ささ)
日本の自然や伝統文化、神事・行事においてとても重要な意味を持つ植物の一つで、笹はただの植物ではなく、「清め」「祓い」「神の宿る依代」「願いを届ける手段」として、神聖・清浄・魔除けの象徴として、古くから多くの神事や年中行事に使われてきました。日本人にとって自然と神のつながりを感じる大切な存在でした。

スゲ
スゲは茎が丈夫でしなやかであり、乾燥させても割けにくいので古代から生活道具の材料として利用されてきました。修験道や遍路の装束として「菅笠」があり、結界や清浄を示す道具として、スゲを編んだものが使われる地域もあります。
日本の暮らしと信仰を支えた「しなやかで強い草」で農具・日用品から宗教的な象徴まで幅広く用いられてきた植物です。

榊(さかき)
榊は一年中青々として枯れにくいため、清浄・生命力・永遠性の象徴とされます。「境(さかい)の木」が語源とも言われ、神域と人の世をつなぐ存在とされ、神棚や祭壇に供えることで神霊を迎える依代(よりしろ)になります。「神に捧げる木」として、日本の神道で古くから行われてきた「神と人とをつなぐための作法」が込められています。

楮(こうぞ)
日本では古くから栽培され、樹皮の繊維が強靭なため 和紙の原料 として最重要視されてきました。丈夫で長持ちするため、公式文書や経典、神事用の文書に多用されました。
祓具である大麻(おおぬさ)も、楮の白紙を細長く切って使うのが基本です。「楮」は、神に捧げる紙を生む聖なる木と見なされて、和紙を通して神事・記録・祓いの文化を支えてきた、日本文化の根幹的な植物です。